2013/11/07

　様々なスイーツがブームを巻き起こす昨今、斬新で新しい味に感動したり、あまりの美しさに見惚れたりもしばしば。
また、インターネットの普及によりメディアへの露出も増え、有名店や話題の店に行列ができ、スイーツがファッション化している様にも感じる。
　ここ最近のブームで話題の中心と言えば、やはり“パンケーキ”まだまだ衰えを知らない雰囲気。いろんなスタイルで提供されているが、私の店では王道なスタイルが定番であり、アイスクリームとベリーソースの組みあわせが人気を集めている。

そんな世の中の動きを感じている合間に、ふと懐かしい味を思い出し、無性に食べたくなる時がある。しかし、長年食べていなくても「美味しい」を感じるのは、無意識のうちに染みついた「好み」なのではないだろうか。例えば、幼い頃よく食べたおやつ、母の手づくりお菓子、楽しみだったお土産etc．人によって思い出の味があると思うが、さまざまなシチュエーションや感情が加わって、記憶に残る心からの「美味しい」が出来上がるのであろう。
長崎の小さな町の小さなお菓子屋に生まれ育った私にとっては、寡黙でアクティブな父と明るく優しい母が作るお菓子達が、何一つ違和感のない日常であり、大の「好み」であったことに間違いない。そして今、同業種に携わる者として、永遠の憧れであり目標でもある。
焼き上がった姿がなんとも美しい“長崎カステラ”幼心にも衝撃だった。郷里を離れ食べる機会が減ったにも関わらず、当時を思い出すだけで「美味しい」を感じることができる。

時折届く父からの贈り物に、心踊り、変わらない味に．．．ほっとする。
いつの日か、我が子も同じ想いに浸る時が来ることを、心密かに願うことにしよう。

（SC000331　Cafe30cc M.yamakawa）